ブログ

AIコマース

エージェンティックコマースとは:UCP・ACPの位置づけと事業者の確認点

6分で読める袖岡侑希

エージェンティックコマースは、AIエージェントが利用者に代わって商品を探し、購入まで進める商取引です。Stripeの説明では、購入者は会話から離れずに商品を見て、おすすめを受け取り、購入を完了できます。AIと事業者をつなぐ規格にはUCPとACPがあり、Googleの購入機能はすでに米国、カナダ、オーストラリアで一部の事業者に提供されています。日本はまだ対象に含まれていませんが、商品データと既存システムの整理は今から進められます。

著者袖岡侑希Outgleam創業者

2026年7月にOutgleamを立ち上げ、事業企画から開発までを担当する。これまでに観光業界向けのAIプロダクトの開発、旅行・マーケットプレイス分野のプロダクトづくりに携わった。

LinkedInOutgleam

エージェンティックコマースとは

これまでのECでは、人が検索して商品を比べ、事業者のサイトで購入していました。AI検索では、商品を探して比べる部分をAIが手伝います。エージェンティックコマースでは、その先のカートや決済にもAIが関わります。

大きな変化は、購入画面が事業者のサイト外へ移る場合がある点です。Googleのヘルプでは、UCPを使った購入は決済がGoogleの画面で行われ、販売者は事業者のままだと説明されています。

ここで押さえておきたい言葉がMerchant of Record(販売者)で、商品を販売して代金を受け取り、返金やチャージバックに対応する当事者を指します。UCPでは事業者が販売者のままで、ACPでもOpenAIは販売者になりません。AIが接客の入口になっても、取引の責任は事業者に残ります。

なぜ共通の規格が必要なのか

AIのサービスと事業者が1社ずつ個別に接続すると、組み合わせの数だけ開発が必要になります。UCPの仕様は、決済まわりの課題を「N-to-N」の複雑さと呼び、決済の仕組みを切り離す設計を採りました。

規格があれば、事業者は対応内容を決まった形で公開でき、AI側は事業者ごとの個別の接続を減らせます。AIが購入まで進める流れは、大まかには次の5段階です。

実際の画面や手順は、サービスごとに異なります。規格は接続の方法を定めるもので、AIの回答に商品が表示されることや、売上を保証するものではありません。

UCPとは

UCP(Universal Commerce Protocol)は、プラットフォーム、AIエージェント、事業者の共通言語を目指すオープンな規格です。2026年1月11日にGoogleが発表しました。開発にはShopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmartが協力しています。

対象の機能は、商品の検索、カートの作成、アカウント連携、チェックアウト、注文管理です。公式サイトでは、ショッピングが提供中、宿泊は仕様のドラフト、飲食は準備中と示されています。

事業者はWebサーバーの所定の場所(/.well-known/ucp)に対応内容を公開し、AI側はそれを読み取って利用可能な機能を確認します。通信はRESTとJSON-RPCに対応しています。最新の版は2026年8月25日に公開されました。

ショッピング分野の技術方針を担うShopping Tech Councilには、Google、Shopify、Etsy、Wayfair、Target、Amazon、Meta、Microsoft、Salesforce、Stripeの担当者が参加しています。

ACPとは

ACP(Agentic Commerce Protocol)は、買い手、AIエージェント、事業者の間の購入の流れを定めるオープンな規格です。StripeとOpenAIが開発し、最初の版は2025年9月29日に公開されました。GitHubの管理者はOpenAI、Stripe、Metaで、状態はベータ、リリース済みの最新版は2026年4月17日版です。

OpenAIの開発者向け文書によると、事業者はCSVまたはJSONの商品フィードを提供し、ChatGPTは事業者側のエンドポイント(接続窓口)を呼び出して購入手続き(チェックアウト)を作成します。決済を処理するのは、事業者が使う決済代行会社です。商品フィードの登録は、承認されたパートナー向けに提供されています。

ACPというオープンな規格と、ChatGPTに実装された機能は、切り離して整理するとよいでしょう。ChatGPT内で購入を完了するInstant Checkoutは2025年9月に始まりました。その後、OpenAIは2026年3月24日の発表で、初期版のInstant Checkoutでは目指す柔軟性を十分に提供できなかったとして、商品探しに注力し、事業者が自社の購入画面を使えるようにすると説明しました。同じ発表で、ACPは商品の発見にも広げられ、Target、Sephora、Best Buyなどの小売企業が連携していると示されています。

UCP、ACP、AP2の役割の違い

UCPは発見から注文管理までの流れを広く扱います。ACPはチェックアウトから始まり、2026年3月の発表で商品の発見にも広がりました。もう1つ押さえておきたいのがAP2です。

AP2(Agent Payments Protocol)は、AIエージェントによる支払いの承認を、検証できる形で記録するための規格です。エージェント同士が通信するA2A(Agent2Agent)や、AIと外部ツールをつなぐMCP(Model Context Protocol)の拡張として使え、UCPでも利用できます。標準化はFIDO Allianceの作業部会で続けられています。

UCPとACPは、どちらか一方を選ぶものとは限りません。StripeとMetaは両方の運営に参加しています。事業者が確認しておきたいのは、規格自体の選択よりも、販売先として想定するAIサービスや利用中のECシステムがどの規格に対応しているか(または対応予定か)です。

2026年11月時点の提供状況

規格があることと、利用者が購入できることは別です。主なサービスの状況は次のとおりです。

サービス購入を完了する場所対象
Google(AI Mode、Gemini)Googleの画面米国、カナダ、オーストラリアの対象商品。一部の事業者のみ
ChatGPT事業者のサイトやアプリOpenAIの案内では米国の利用者向け

Googleのヘルプの対象国に、日本は含まれていません。参加には、技術面の実装と、Googleへの申し込みが必要です。

Shopifyの2026年3月24日の発表では、Shopifyの事業者の商品はChatGPTのアプリ内ブラウザで購入でき、デスクトップでは別のタブで店舗のサイトが開きます。利用中のECシステムによって購入の流れが変わるため、自社の環境で確認するとよいでしょう。

事業者が今確認しておくこと

Googleのヘルプに、日本で購入機能が提供される時期の記載はありません。それでも、次の4点は今から確認できます。

  • 商品データ:価格、在庫、商品の識別子を、商品フィードとして出力できる形で正確に保てているかを点検する
  • 既存のシステム:利用中のEC・予約システムと決済代行会社が、UCPやACPへの対応予定やAPIの仕様を公開しているかを確認する
  • 販売者としての対応:AI経由の注文でも返金、問い合わせ、チャージバックへの対応は事業者に残るため、今のサポート窓口で受けられるかを整理する
  • 参加条件:販売したい地域とサービスが対象か、承認や申し込みが必要かを定期的に確認する

商品データの整理は、AIに正しい情報を読み取ってもらうための土台にもなります。AIの回答に自社の情報がどう出ているかの確認は、AI Visibilityのページで整理しています。

まとめ

規格の名前を追うより、自社の販売地域が対象になったときに動ける状態かを確認するのが現実的です。まず、商品データの精度と、利用中のシステムの対応予定を確かめるとよいでしょう。

Outgleamは、今使っているEC・予約システムを活かして、AIからの直接注文・直接予約につなぐ仕組みを開発しています。予定している機能はAI Commerceのページで紹介しており、利用中のシステムについての相談はお問い合わせで受け付けています。

← ブログ一覧へ戻る